ユニバーサル哲学カフェ

障害をメインに語り合います

第4回 障害者からの社会変革は可能かー青い芝の会の歴史に学ぶー

こんにちは。八木智大です。第4回のユニバーサル哲学カフェは、障害者が生きるために、社会とどう向き合うかを考えます。

日本の障害者運動の中心には、脳性マヒの人々がいました。団体名を「青い芝の会」といいます。彼らは、1960年代〜会誌を通じて親交や思想を温め合い、1970年代〜自らの生存のため社会活動をしました。それは当時多くの人に過激と受け取られましたが、今の時代ふり返ってみると、まっとうな活動であったと見えるのではないかと思います。

数十年前に比べて、社会の障害者への理解はすすみました。現代の若い障害当事者が享受している権利は、彼ら先人たちの闘いによって勝ち取られたものです。その恩恵を、障害者だけでなく、あらゆるマイノリティ、あらゆる人々が受けています。

障害者運動は大きな成果をあげました。鉄道の駅にはエレベーターがつき、市バスにも車椅子で乗り降りできるようになりました。障害者自身が大きな声を上げなくとも、国や大企業などマジョリティが先頭をきって、我々障害者を「理解」しようとしてくれている。そう感じる一方で、障害年金が打ち切られたり、公務員が障害者差別をしたり、まだまだ闘わなくてはいけないことも残っています。今後、自分たちが生きていくために、障害者は何を目指せばいいのでしょうか。

今回は、青い芝の会の研究者である荒井裕樹さんによる著書『差別されてる自覚はあるか』と『障害と文学』を課題図書とします。『差別されてる自覚はあるか』は、青い芝の会の思想的リーダーであった故・横田弘さんの評伝です。横田弘さんは脳性マヒ者の中でも、歩けず言語障害も重く、弱い立場にありました。そして、その弱さを突き詰めて、考えを述べ行動されました。『障害と文学』は、青い芝の会が「しののめ」という脳性マヒ者の会誌から発展したことを明らかにしたものです。親や社会によって家に閉じ込められた脳性マヒ者たちが、会誌「しののめ」を通じて交流し、親への反抗心を育み、実際に家を出て脳性マヒ者同士で住みはじめ、当時の障害者にはタブーとされていた恋愛をし、青い芝の会という運動体に発展していく様子が描かれています。

青い芝の会がかつて、一番弱い立場にある人として、自分たちと健常者社会に突き詰めた思想と実践をふり返ることで、生きていくことを考えます。

 

皆様こんにちは。本田基博です。

障害は個人が持つ欠陥ではなく、社会的に構築されたものである。この考え方は、障害の社会モデルと言われています。これは、70年代に英米で活発に行われてきた障害者運動の中で生まれた考え方であり、社会に対して声を上げるということの重要性が示されました。

青い芝の会は、日本の障害者運動においては非常に先進的でした。その行動綱領の中にある「愛と正義を否定する」、「健全者文明を否定する」といった文言が示す通り、青い芝の会は「否定」という手段で社会に立ち向かいました。
また、「脱家族・脱施設」を掲げて、庇護される存在として生きることからの脱却を図り、また、自分達を庇護される必要のある存在として仕立て上げている社会(=健全者文明)に徹底的に抵抗しました。

かつて頻発した車椅子利用者に対するバスへの乗車拒否を解消するために、バスジャックを起こすなど、その手段は過激であると評されることも多いですが、それが結果的に現在に結び付いているというのも事実です。

このように、青い芝の会の活動は、現在の障害者運動には見られない急進性がありました。

現在はどうしても、何かを否定したり、過激な主張をすることに対する忌避感が社会全体の空気としてあるように思えます。これは、当時と今とでは時代背景が違いますので、流れとしては自然なことなのかもしれません。しかし、社会モデルは、本来的には権威主義的な社会に対する抵抗が根幹にあります。今でも社会モデルという用語は、障害について語る文脈でもよく出てきますが、その本来の意味とはズレのある用いられ方をすることが多いです。そんな今だからこそ、青い芝の会の運動を振り返ってみる意義は大きいのではないかと思います。

…と、ここまで青い芝の会のことを書いてきましたが、僕個人としては、「健全者文明」という言葉に引っ掛かりを感じたりしています。ここでの「健全者」とは誰のことなのか、なぜあえて「健全者文明」という言葉を用いたのか、そういったことも話し合えたらなと思っています。よろしくお願いします。

 

日時:5/5(日)10時〜13時 13時〜15時半は昼食つき交流会

場所:カフェ・コモンズ 大阪府高槻市 JR摂津富田駅・阪急富田駅すぐ)

料金:昼食(800円、要予約)またはワンドリンク および 会場費カンパ500円以上

予約先:yunitetsu@gmail.com

図書:荒井裕樹著『差別されてる自覚はあるか』『障害と文学』どちらかを一部分以上読んできてください 余裕ある方はレジュメの作成もお願いします

 

差別されてる自覚はあるか: 横田弘と青い芝の会「行動綱領」

差別されてる自覚はあるか: 横田弘と青い芝の会「行動綱領」

 

  

障害と文学―「しののめ」から「青い芝の会」へ

障害と文学―「しののめ」から「青い芝の会」へ